この記事のポイント
・松久由宇は北海道出身、1949年生まれのベテラン漫画家
・伝説的な漫画家たちのアシスタントを経て劇画界でキャリアを積んだ経歴を持つ
・クイーン・墓村など複数のペンネームを使い分けてきた異色の作家
・代表作『哀愁荒野』『危険なジル』など人間ドラマと骨太なアクションが持ち味
・レトロな劇画作品に興味があるマンガファンにこそ読んでほしい作家性
マンガレビューやおすすめ作品を探しているなら、一度は耳にしておきたい名前がある。それが松久由宇(まつひさ ゆう)だ。1970年代から1980年代にかけて数々の劇画・ストーリーマンガを手がけ、今なお根強いファンを持つベテラン漫画家である。今回は、松久由宇という作家の歩みと代表作を、マンガ好きの視点であらためて整理してみたい。
松久由宇とはどんな漫画家なのか
松久由宇は1949年4月19日生まれ、北海道置戸町の出身と伝えられている。本名は松久壽仁で、これまでにクイーン・墓村、墓堀人、磨湖丈一、柳遼太、松久鷹人、鷹羽遙といった多彩なペンネームを使い分けてきた経歴を持つ。ひとりの作家がこれほど多くの名義を持つケースは珍しく、それだけ幅広いジャンルの作品に携わってきた証でもある。
松久由宇は投稿や持ち込みを一切経験せず、依頼原稿のみでキャリアをスタートさせたという珍しい経歴の持ち主。デビュー当初から実力が認められていたことがうかがえるエピソードだ。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 本名 | 松久壽仁 |
| 出身地 | 北海道置戸町 |
| 主な別名義 | クイーン・墓村、磨湖丈一、鷹羽遙 ほか |
| 得意ジャンル | 劇画・青春ドラマ・アクション |
漫画家になるまでの道のり
松久由宇が本格的にマンガに触れたのは中学3年生の頃。漫画サークル「奇人クラブ」に参加し、後に人気作家となる同世代の書き手たちと交流を持ったと伝えられている。高校時代には北海道新聞社主催の漫画募集企画をきっかけに、同郷の先輩作家に誘われて別の漫画サークルにも参加。こうした地道な下積みが、のちの画力と構成力の土台になったと考えられる。
高校卒業後は上京し、当時の人気劇画家のアシスタント公募に応募して住み込みで修行を積んだ。その後、別の巨匠のアシスタントへと移籍し、実践的な作画技術を磨いていった。この時期には、テレビアニメの制作にも携わった経験があるとされ、静止画(スチール)による演出手法など、映像的な構図感覚を養う機会にも恵まれたようだ。
複数の巨匠アシスタントを経験したことで、松久由宇の画風には劇画の重厚さと少年・青年誌向けの読みやすさの両方が同居している。ジャンルをまたいで作品を発表できたのは、この修行時代に培われた引き出しの多さによるところが大きい。
ストーリー作家としてのデビュー
ストーリーマンガの描き手としての実質的なデビュー作は、クイーン・墓村名義で発表した『夢幻機』だ。青年誌の劇画枠に掲載されたこの作品を皮切りに、松久由宇は依頼原稿のみで着実にキャリアを重ねていく。持ち込みや新人賞への応募を経ずに第一線で仕事を続けてきた点は、マンガ家としてはかなり異色の歩みと言える。
代表作品を振り返る
松久由宇の作品リストには、原作者とタッグを組んだ骨太なストーリーマンガが並ぶ。ここでは特に知られている代表作をいくつか紹介したい。
劇画界の巨匠・梶原一騎が原作を手がけた人間ドラマ。浅草・雷門の祭りの夜、網走刑務所から戻った兄と、家族との複雑な距離感を抱える妹が再会する場面から物語が動き出す。妹の京子は水商売の世界に飛び込み、銀座の高級クラブでのし上がっていく中で様々な人間模様に翻弄されながら、最終的に自分の生き方を見つけていく。波乱に満ちた人生模様を骨太に描き切った、松久由宇の代表作のひとつだ。
脚本家・原作者として知られるやまさき十三とタッグを組んだ青春群像劇。1979年に発表されたこの作品は、思春期特有の揺れ動く感情や人間関係の機微を、松久由宇らしい繊細なタッチで描いている。青春マンガというジャンルの中でも、等身大の心理描写に強みを見せた一本だ。
脚本家・工藤かずやが原作を担当したアクションドラマ。海外の警察組織に所属するヒロインが、事件をきっかけに特殊な運命を背負うことになるハードボイルドなストーリーが展開される。スピード感のある構図と緊張感のある画面づくりは、松久由宇がアクション作品でも高い画力を発揮できることを示している。
この他にも『陽美子』『スカイ・ロード』『風の戦士』『魔獣戦士』など、恋愛ドラマからファンタジー、バトルアクションまで幅広いジャンルの作品を手がけているのが松久由宇の大きな特徴だ。ひとつのジャンルに縛られず、原作者の個性に合わせて画風の引き出しを柔軟に使い分けてきた点は、長くキャリアを続けてきた劇画家ならではの強みと言えるだろう。
松久由宇作品の魅力・画風の特徴
松久由宇の作品を読み進めると、まず目を引くのが構図の大胆さだ。見開きページを活かしたダイナミックな演出や、人物の表情の陰影を丁寧に描き込むスタイルは、昭和後期から平成初期にかけての劇画特有の重厚感を感じさせる。一方でストーリーテリングの面では、原作者の持ち味を尊重しながらキャラクターの心情を丁寧にすくい上げる手腕にも定評がある。
・アクションシーンの緊張感と構図の見せ方
・人間関係のドラマを丁寧に描く筆致
・原作の世界観を裏切らない画作りの安定感
複数のペンネームを使い分けてきた背景には、ジャンルごとに読者に与えたい印象を変えたいという作家としてのこだわりがあったとも考えられる。同じ描き手でありながら、作品ごとに異なる空気感を出せるのは、幅広い経験に裏打ちされた技術力があってこそだ。
今マンガファンが松久由宇作品を読む楽しみ方
近年は電子書籍サービスの充実により、絶版になっていた昭和・平成初期の劇画作品を手軽に読み返せる環境が整ってきている。松久由宇の作品群もその例に漏れず、電子書籍ストアでまとめて読めるものが増えているのは嬉しいポイントだ。
まずは代表作『哀愁荒野』のような人間ドラマ路線から入り、そこから『危険なジル』のようなアクション路線、『初体験 青春ポエム』のような青春群像劇へと読み広げていくと、松久由宇という作家の引き出しの多さを実感しやすい。
また、松久由宇は原画(生原稿)が愛好家の間でやり取りされるほど、画力そのものへの評価も高い作家だ。ページの隅々まで書き込まれたペンタッチを電子書籍の拡大表示でじっくり眺めてみるのも、レトロ劇画ならではの楽しみ方のひとつだろう。
・昭和〜平成初期の劇画テイストが好きな人
・骨太な人間ドラマを読みたい人
・ひとりの作家が幅広いジャンルを描いた足跡を辿りたい人
まとめ
松久由宇は、複数のペンネームを操りながら劇画から青春ドラマ、アクション、ファンタジーまで幅広いジャンルを手がけてきた息の長い漫画家だ。巨匠たちのアシスタントとして基礎を磨いた下積み時代、依頼原稿のみで歩んできた異色のキャリア、そして『哀愁荒野』をはじめとする骨太な代表作の数々は、今のマンガファンが読んでも十分に楽しめる読み応えを持っている。電子書籍で気軽に手に取れる環境が整った今こそ、松久由宇の作品世界にじっくり浸ってみてはいかがだろうか。
松久由宇の代表作と歩みに見る劇画の魅力をまとめました
松久由宇は北海道出身、1949年生まれの漫画家で、クイーン・墓村など複数のペンネームを使い分けながら劇画・青春ドラマ・アクションと幅広いジャンルを手がけてきた。巨匠のアシスタントを経て依頼原稿のみでキャリアを重ねた異色の経歴を持ち、代表作『哀愁荒野』では人間ドラマの深みを、『危険なジル』ではアクションの緊張感を、『初体験 青春ポエム』では青春期の心理描写を描き分けている。ダイナミックな構図と丁寧な心情描写を両立させる画力は今読んでも色あせておらず、電子書籍で手軽に触れられる現在、あらためて読み返す価値のある作家だと言えるだろう。














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